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第2 章 技術解説
2.2 強誘電体材料
■ペロブスカイト構造とPZT
多くの強誘電体は化学式ABO3で表され , 中央付近に小さいほうの金属元素を含んだ酸素八面体の
構造をしています。ABO3型の強誘電体結晶はペロブスカイト型, イルメナイト型 , タングステンブロ
ンズ型に分類されます。FRAMの電荷蓄積用の候補にあがっている強誘電体のほとんどは , 図2.1 に
示すようなペロブスカイトに属します。正方晶系のペロブスカイト構造では, 立方格子の一つの(001)
方向に格子が伸び, 他の 2 方向には縮みます。伸びた方向では , 正イオン (A, B), 負イオンと価電子の
変位に基づき , 正と負の電荷の重心が分離しており , 自発双極子モーメントが生じています。この自
発双極子モーメントの単位あたりの大きさが自発分極 (C/cm2)です。伸びた方向がc 軸<001> 方向で
あり, 縮んだ方向が a 軸<100> とb 軸<010> 方向です。自発分極は c軸の方向に現れます。
図2.1 ペロブスカイト構造
代��的な強誘電体材料はペロブスカイト構造の PZT です。PZT はPbZrO3とPbTiO3の固溶体であ
るところから, 各々の陽イオンの頭文字をとって , 一般に PZT と呼称されています。PZT 材料の特長
として , 各種イオン(La など)の添加により , その材料特性が大きく変化することが上げられます。
ペロブスカイト型化合物PZT: Pb(Zr,Ti)O3の結晶構造を図 2.2 に示します。
図2.2 PZT (Pb (Zr,Ti)O3)結晶構造
::O:AB
(100)
c
(001)
b
(010)
a
:Zr/Ti:O:Pb