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第7 章 FRAM グリーン化の取組み
図7.2 FBGAパッケージの模式図
■強誘電体キャパシタFRAM では , 強誘電体キャパシタの中に鉛が含まれています。図 7.3 にFRAM の模式図を示しま
す。上下の金属薄層(電極)で挟まれた厚さ200 nm の薄層が強誘電体層です。鉛はこの層に PZT と
いう酸化物の結晶の形で存在しています。図7.4 にPZT 結晶の模式図を示します。
鉛の規制を定めているRoHS 指令では , PZT は電子セラミック部品として禁止物質から除外されて
います。それにならい, 当社でも指定有害物質規制の除外対象としています。
FRAM デバイス中の鉛の濃度は製品によって異なりますが , 現時点では最も大きな場合で 30 ppm
です。この値は, 私たちのまわりに存在する鉛の値と比べてどの程度なのでしょうか?
鉛は地殻を構成している元素の一つです。その地殻(地表から約 16 km)中の各元素の濃度はF.W.
Clarke(1924 年)らによってに発表されており , クラーク数とよばれています。鉛のクラーク数は
13~15 ppm という値です(参考文献 : *7) 。一方 , 住宅地や公園など私たちの身の回りの土壌に含
まれている鉛の濃度は , 自然レベルとして 15 ~30 ppm です(参考文献 : *8)。ですから, FRAM の
鉛濃度は土壌に含まれる自然レベルの濃度とほぼ等しいといえます。日本では, 土壌汚染浄化の基準
とする鉛濃度を 150 ppm (mg/kg) と定めています(参考文献 : *9)。仮にすべてのFRAM が廃棄され
て土壌となったとしても基準値を超えることはありません。
動物や植物は , 生育する過程で土壌中の鉛を取り込みます。したがって , 自然から得られる食物
は, それ自体がごく微量ですが鉛を含んでいます。米国の EPA が1986 年に食品中の元素濃度を調
査した報告を出しており, 系統的に調査した報告としてよくまとまったものです(参考文献 : *10) 。
それによると, 例えば , 乳製品に含まれる鉛濃度は 3~83 ppm(μg/g), 穀物の鉛濃度は 2~136 ppm
と報告されています。FRAMの鉛濃度は , これら食品に含まれる鉛濃度と同レベルです。
図7.3 FRAMの模式図
LSI
Cu
+
0.8/0.75/0.65/0.5mm
(PZT)
1
2
3