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第2 章 技術解説
2.1 FRAM のセル構造強誘電体膜を不揮発性メモリセルとして集積化した構造の代表的なものには, 大きく2 種類, (1) 1T/
1C 型(2T/2C 型), (2) MFSFET 型があります。現在製品化という点で先行しているのは , 2T/2C 型
FRAM方式です。
(1) 1T/1C型(2T/2C 型): 1 Transistor/1Capacitor (2Tr/2Cap)
この構造はDRAM セルと同様 , データを保持する蓄積容量 (C) と, それにアクセスするトランジス
タ(T) で構成されます。DRAMセルとの違いは , 蓄積容量の材料が , シリコン酸化膜やシリコン窒化
膜といった常誘電体に替わって , 強誘電体で構成される点にあります。したがって , このセル構造を
持つFRAM の技術は , DRAM セル技術との類似性が非常に高く , 比較的容易に集積化が可能となりま
す。
セル情報の読出しは, セルに電圧を印加したときの分極量の変化に伴う分極電流を読む方式(詳細
は「2.5 セルへのデータ書込み , 読出し」を参照)となります。したがって, 必然的にセル情報は読出
しサイクルごとに壊れる破壊読出しとなり, 同一サイクル内での再書込みが必要となります。
(2) MFSFET 型: Metal Ferroelectric Semiconductor FET
この構造はゲート酸化膜をシリコン酸化膜から強誘電体膜に替えることにより実現できます。セル
への書込みは , ゲート電極と基板間に電圧を印加し , 強誘電体膜を分極反転させ , その分極方向によ
りトランジスタの閾値が変化することを利用します。所定のゲート電圧を印加した時, 分極方向に応
じたドレイン電流の大小として, セル情報を取り出すことが可能となり , EEPROM やFlash Memory の
設計技術との整合性が高くなります。また , 非破壊読出しが可能な点とセル面積が小さくなる点が ,
この方式の大きな特長としてあげられます。
しかし, シリコン基板と強誘電体界面での結晶不整合などの問題から , トランジスタの閾値を安定
して制御することが難しく, また強誘電体膜の特性劣化が著しいため, 不揮発性が失われてしまい , 製
品化には至っていません。これら問題点を解決するため, フローティングゲート上に強誘電体膜を成
長させるMFMIS (Metal Ferroelectric Metal Insulator Semiconductor) も提案されていますが , 電圧分割に
よる分極量低下などの困難が伴い , 加えて集積化が難しいといった問題点もあり , 今後の課題となっ
ています。